『うつ病』 健康メモより
Aさんは四十八歳の大手スーパーの課長で、もともと真面目で責任感も強いかたです。リストラによる人員削減で仕事量が増加し、上司からは無謀と思える目標を与えられ、毎日、帰宅が午前0時を過ぎ、休日も勤務されていました。

しかし、不況のため売り上げは落ち続け、心身共にすり減らしていました。
そのころから、疲れているのに夜中何度も目が覚めたり、朝早くから目が覚めたりするようになりました。
体はだるく、頭もモヤがかかったようで重い。ニュースや新聞も見る気になれず、何をするのもおっくうで、自信もなくなり、くよくよしたり、会社を辞めようかと考えるようになりました。

食欲もなくなり体重も減ってきましたが、会社の健康診断では不思議なことにすべて異常はありませんでした。
それでも、ますますやせていくので奥さんが心配して一緒に来院されました。

診察の結果、Aさんはうつ病と呼ばれる病気でした。
十分休養をとってもらえるようにし、抗うつ剤といううつ病を治す薬を服用してもらったところ、今では元気に回復され、やはり激務ではありますが、再び頑張って働いておられます。
現代社会で生きていくためには、文字通り身も心も削っていかないといけないようです。
このような中で、頑張って耐えて生きているかたがたに追い打ちをかけるように体や心の変調が襲ってくることがよくあります。

その中で多い病気がうつ病です。
うつ病は現代では非常にありふれた病気で、高血圧や糖尿病と同じくらいの頻度でみられるものです。Aさんと同じような症状が生じてきたら、必ず元どおりに回復する病気ですから一人で悩まず、できるだけ早く治療を受けてください。
(1999.2)


茨木市医師会 渡辺 洋一郎